(※当事者との関係や経緯などはだいぶ省略しています。)

今回、外国人売主の方の印鑑証明書に代わる書類としてサイン証明書も取得していただく必要がありました。また、登記簿上の住所から現住所へ住所を変更されていましたので、この住所変更の経緯についても証明書を取得していただく必要がありました。
これらは、原則として国籍を有する国の官憲の証明である必要があります。
今回はイタリア国在住英国人というケースでしたので、居住国であるイタリア国官憲ではなく、国籍を有する英国官憲の証明である必要があるため、「不動産の管理処分権の授権に関する委任状」の認証手続とあわせて在イタリア英国領事館に依頼していただくように依頼しました。

念のため全て英文ドラフトを作成して渡してあり、在イタリア英国領事館に行っていただければ特に問題ないものと思っていたのですが、ここで問題が発生。
新型コロナウィルスの影響により、在イタリア英国領事館が上記のような証明書の発給窓口を閉鎖してしまい、再開の見込みも不明という状況になってしまいました(2020年のこと)。
コロナ禍の中、わざわざ本国等へ移動し証明書を取得しに行くということは困難な状況であり、本国官憲の証明書を取得するのは現時点では不可能との判断になりました。

そこで、下記通達等は商業法人登記に関するものではありますが、商業法人登記に限らず不動産登記においても同じ趣旨であり、下記通達の第3及び下記依命通知1(2)にあたるものとして居住国であるイタリア国官憲の証明書によることができるものと考え、管轄法務局へ確認。
結果、居住国であるイタリア国官憲の証明書でよいとの回答を得ることができました。

【法務省】商業・法人登記関係の主な通達等 3外国人・海外居住者による登記申請に関する通達

◎平成28年6月28日民商第100号通達(改正)平成29年2月10日民商第15号通達
登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて(PDF)
第3「外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情から,当該署名が本人のものであることの本国官憲の作成した証明書を取得することができないときは,その旨の登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び当該署名が本人のものであることの日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した証明書の添付をもって,市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。」

◎平成29年2月10日民商第16号依命通知
「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて」の一部改正について(PDF)
1(2)「当該外国人の本国においては署名が本人のものであることの証明書の取得が可能であるが,当該外国人が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲では署名が本人のものであることの証明書を取得することができない場合」

また、上記依命通知1(2)のとおり「当該外国人が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲に確認したところ,署名が本人のものであることの証明書を発行していない旨の回答があった旨」を記載した上申書の用意を追加でお願いしました。

イタリアの公証人から裁判所の認証も受けるように指示があったとのことで、双方の認証を受けていただき、公証人と裁判所の認証付の署名証明書兼住所変更証明書及び不動産管理処分権の授権書を含めた書類一式を日本へ送付していただくことができ、売主側に用意していただく書類がそろいました。