『登記官からみた「真正な登記名義の回復」・「錯誤」-誤用されやすい登記原因-』(新日本法規)を買ってみました。
著者は、元豊島出張所の総務登記官の方です。
個人的には、真正な登記名義の回復によらずに『「他の」登記原因による所有権の移転と構成するのが相当と考えられる事例』として、「他の原因」ごとの事例が挙げられている点が参考になりました。
ちょうど相談を受けていた件で参考になったのは、「民法第646条第2項による移転」と構成できる所有権移転登記に関する事例です。
銀行の融資を受けて不動産を購入するにあたり、信用力などの問題から、Bの依頼によりAが債務者として融資を受けてA名義で不動産を購入し、「所有権移転登記」「抵当権設定登記」を行ったのち、Bの資金でA名義の債務を全額弁済したようなケースです。
BからAに対して、Aを債務者として融資を受けてA名義で不動産を購入することを「委任」し、その後、Bの資金でA名義の債務を全額弁済し、本不動産の購入目的を達成したので、この「委任」を終了させて、AからBに「民法第646条第2項による移転」を原因として所有権の登記名義を移転することとなります。
「不動産の所有権の取得」という事務処理を委任したというふうにみます。
他には「贈与」「代物弁済」「委任の終了」「和解」を登記原因として構成できる事例が載せられていて、興味深いと思います。