司法書士法人オネスト 押田健児の備忘録

平成21年10月独立開業、平成24年10月法人化しました司法書士のブログです。東京都千代田区(神保町、小川町、淡路町、御茶ノ水、竹橋)で司法書士やってます。

判例

取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めについて

平成29年2月21日最高裁判所第三小法廷決定
『取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である』
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86527

相続税の節税目的の養子縁組についての最高裁判決(H29.1.31)

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86480

『養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をす
ることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。』



【判例】最判H27.2.17事前求償権を被保全債権とする仮差押と事後求償権の消滅時効を中断する効力について

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84862

「事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有するものと解するのが相当である。」
「事前求償権は,事後求償権と別個の権利ではあるものの(最高裁昭和59年(オ)第885号同60年2月12日第三小法廷判決・民集39巻1号89頁参照),事後求償権を確保するために認められた権利であるという関係にあるから,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば,事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができる。また,上記のような事前求償権と事後求償権との関係に鑑みれば,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをした場合であっても民法459条1項後段所定の行為をした後に改めて事後求償権について消滅時効の中断の措置をとらなければならないとすることは,当事者の合理的な意思ないし期待に反し相当でない。」


【判例】H26.9.18名古屋高裁「不在者財産管理人による単純承認」

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=84633

◎要旨
不在者財産管理人が,不在者が相続した財産を家庭裁判所の許可を得て売却した行為が,不在者にとって,民法921条1号の単純承認に当たるため,後に,不在者が相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にした相続放棄は無効であるとされた事例

数次相続の最終相続人が1名である場合の相続登記の申請について(2)

以前のコチラの記事に関連する判例として。

東京地判H26.3.13
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84478

判示事項
被相続人甲の遺産について遺産分割未了のまま他の相続人が死亡したから当該遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してされた当該遺産に属する不動産に係る相続を原因とする所有権移転登記申請に対し,登記官が登記原因証明情報の提供がないとしてした却下決定が,適法とされた事例

裁判要旨
被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり,被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し,乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において,丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人甲の遺産は,第1次相続の開始時において,丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てが丙に帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。

判決文抜粋
『三多摩支会は,平成6年11月18日,本件と同様の事案(甲が死亡して乙及び丙が共同相続人となったが,遺産分割未了のまま,乙が死亡して丙が単独の相続人となった事案)について,遺産処分決定書又は遺産分割協議書を添付して,直接甲から丙に対する相続登記を申請することができるという取扱いを決議したこと,三多摩地域以外においても,同様の取扱いを認める例が,複数存在していたことが認められる。また,三多摩支会の実務協議会決議集の記載(・・・以下「三多摩支会資料」という。)によれば,東京法務局民事行政部不動産登記部門は,平成6年当時,三多摩支会における上記取扱いを是認する内容の見解を示していたことがうかがわれる。
しかしながら,遺産分割をしないまま第2次相続が開始し,相続人が1人となった場合において,遺産処分決定を観念する余地がないことは前記検討のとおりであり,原告の主張する上記取扱いは,実体法上の根拠がないものといわざるを得ない。
さらに,三多摩支会資料のほかには,法務局その他の公的機関が,原告の主張する取扱いを認めることを公的見解として明らかにしたことをうかがわせる事実ないし証拠はなく,登記分野の法律雑誌において,上記取扱いを否定する本件各記事が掲載され,東京法務局民事行政部不動産登記部門も,本件各処分の当時,本件各記事と同様の見解を有していたこと・・・をも併せ考えれば,原告の主張する上記取扱いの例が複数存在していたからといって,このことが登記実務を法的に拘束するものであるということはできない。』

全国的に許容されていた取り扱いと思っていたのですが、そうではないと。

なお、判決文を読むと、登記原因証明情報の一部として添付した「遺産処分決定書」に「被相続人Aの相続登記につき,共同相続人の1人で,被相続人の妻Bは遺産分割未了のまま平成24年3月26日死亡致しました。つきましては,被相続人Aの遺産である別紙物件の共有持分は,相続人Dが直接全部を相続し,取得したことを上申いたします。」と記載があったとありますが、この記載内容自体はあまり適切ではないように思います。


司法書士法人オネスト 司法書士 押田健児
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プロフィール

司法書士 押田健児

平成14年に司法書士試験に合格し、複数の事務所勤務を経て、平成21年10月1日に九段下に司法書士事務所を開業しました。平成24年10月に神田錦町に事務所移転、法人化。NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員。
昭和54年長野県生まれ、東京都町田市育ち。
幼稚園から中学校までレスリング道場に通い、高校大学ではレスリング部に所属。
日本大学藤沢高校卒業。
法政大学法学部法律学科卒業、一部体育会レスリング部所属(スポーツ推薦入学でした)。
平成27年4月より、町田市体育協会評議員
【保有資格など】
司法書士 行政書士 宅地建物取引主任者 測量士補 NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員 上級救命技能認定

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